お店にあるような専用の焙煎機は不要で、自宅にあるもので代用できます。
その中で最も一般的で簡単な手綱焙煎から始めるのがおススメです。
準備するもの
1.手綱焙煎
ホームセンターなどで売っている物でOKです。銀杏を煎るフタ付きがおススメです。
むしろフタ付きを推奨します。
2.カセットコンロ
家庭用で十分です。屋外で焙煎する場合は風よけも必要です。
3.ストップウォッチ
記録用として使います。しっかり記録して次に生かしましょう。
4.ステンレスのザル
煎った豆を冷ますのに使います。大きいサイズだと使いやすいです。
蓋付きの手綱があれば不要です。
5.ドライヤー
ザルに広げた豆を冷やすのに使います。風で飛び散らないように気を付けてください。
専用の冷却機があると楽に冷ます事ができます。
6.軍手
手綱やザルが熱くなるのでやけど防止として使用します。
7.クリップ
手綱のフタが開かないように留めます。
8.生豆
慣れるまでは安い豆で練習しましょう。インターネットで安く買えます。
焙煎は色、香り、音で豆の状態を判断します。
手綱はそのすべてを直接見て、感じて、聴き取る事ができるので初心者に最適です。
焙煎の流れ
大まかに説明すると「水抜き~1ハゼ~2ハゼ~冷却~ガス抜き」の順番になります。
生豆は少ない量より多い方が煎りムラが少なくなります。
お互いの熱でも豆は焙煎が進みます。適度な豆量は熱が全体に広がりやすくなります。
流れを掴むまでは少量で練習して、慣れてきたら少しづつ増やしましょう。
焙煎度を決める
生豆を火にかける前に忘れてはいけない作業がもう一つあります。
それは「どんなコーヒーに仕上げるか」です。
焙煎には浅煎りから深煎りまで大まかに4種類、更に細かく分けると8種類あります。
「なんとなくこのくらいで仕上げよう」は失敗します。下記に、焙煎度の決め方の記事を貼っておくので参考にしてみて下さい。
フクちゃん 生豆を買ったけど、どの焙煎度にすればいいか迷っちゃうよー! 店員さん 大丈夫。焙煎度に正解は無いから好きにやっていいんだよ。 フクちゃん でも、せっかくだから美味しい[…]
必ず仕上げる焙煎度をしっかり決めたうえで生豆に熱を加えていきましょう。
手綱に生豆を入れてクリップで留める
【水抜き】※超重要!
コーヒーの焙煎作業では、この水抜きが特に大事な工程になります。
時間をかけ、焦らずじっくり行いましょう。
水抜きとは
生豆に弱火で熱を加え、豆に含まれる水分を外に出す作業です。
天日乾燥式(ナチュラル精製)のもので10〜13%、水洗式(ウォッシュト精製)はもう少し多く含まれています。
水抜きが不十分だと生焼けになり、えぐみや渋み、苦みが残ってしまいます。
産地や生豆の大きさ、色、保存状態によって水抜きの時間は変化します。
人によって「やらなくても良い」という方もいますが、しっかり水抜きを行ったほうが美味しいコーヒーを味わえます。
弱火で水抜き(約10分)
始めは弱火で水抜きをして下さい。
網と火の距離は約10センチを維持し、水平にゆっくり振り続けます。
チャフ(薄皮)が剥がれ始める
少しづつ豆の青臭い香りが立ち込め、「チャフ」と呼ばれる銀皮(シルバースキン)がコンロの周りに飛び始めます。
豆の色も黄色に変化していきます。
少し火力を上げて更に水抜き(約5分)
ほんの少しだけ火力を上げます。豆の色は更に黄色から薄い茶色に変化してコーヒーらしい香りを感じるようになります。
【浅煎り】1ハゼ開始~ピーク
コーヒー焙煎では見た目と匂い、そして音で今どの段階なのかを判断します。
その中で「ハゼ」と呼ばれる音は最も判りやすいサインでもあります。
ハゼとは
「爆ぜる(はぜる)」と書きます。
コーヒー豆に熱を与え続けると豆がはじける音がします。
この豆が爆ける現象を「ハゼ」と言います。
1ハゼは「バチバチ」と割と大きな音が鳴り、約2分程続きます。
音が鳴り止んで1分半~2分で2ハゼが始まります。
2ハゼは「ピチピチ」とやや小さめに聞こえます。
音が鳴る理由は
熱を加えると豆の内部で熱分解反応が起き、コーヒー豆が膨らみます。
香りや味に関する成分が発生すると共に炭酸ガスも生まれます。
ガスが豆の内部で破裂して音が鳴ります。
1ハゼは豆の表面側、2ハゼは中心側で起こります。音は「1ハゼ」と「2ハゼ」の2回鳴ります。
更に火力を上げる
1ハゼに向けて更に火力を上げていきます。豆の色も濃い茶色に変化していきます。
1ハゼのスタートからピークまで
「バチバチ」と音が鳴ったら1ハゼのスタートです。約1分後にピークをむかえ、約2分ほど続きます。(火力によって多少前後します)
ライトローストは酸味が強く出すぎてしまうので一般ではあまり好まれません。
ずっと聴いていたいと思うほど気持ちいい音です。
焙煎度に関する詳しい記事は下記からどうぞ。
焙煎について 世界には数多くのコーヒー豆が存在し、品種や生産国による精製方法、酸味や苦み、豆の大きさ、硬さなど様々な特徴があります。そして、そのコーヒー豆のポテンシャルを引き出すためには、適切な焙煎度(煎り止め)が必要になってきます。 […]
焙煎度別の味や特徴、煎り止めのタイミングなどを詳しく説明しています。
【中煎り】1ハゼ終了~2ハゼ手前
このあたりからコーヒーらしい味や香りが現れ始めます。腕の疲れもピークを迎えますが気を抜かず振り続けて下さい。
1ハゼの終わり
徐々にハゼが鳴り止み、音がしなくなったら1ハゼの終了です。
この時点で煎り止めると「ミディアムロースト」と呼ばれる浅めの中煎りです。終了の見極めが少し難しいです。
2ハゼ始まり手前
1ハゼが終わると約1分30秒から2分程で2ハゼが始まります。
ここで煎り止めた状態は「ハイロースト」と呼ばれ、やや深めの中煎りです。豆のシワも伸び、良い香りが立ち込めます。酸味のピークが過ぎ、苦みと甘味が出始めます。
【中深煎り】2ハゼ開始~2ハゼ終了
コーヒーの味が一番豊かに出る焙煎度です。1ハゼで聞いた音とは違った「ピチピチ」と少し小さめの音が聞こえたら2ハゼ始まりの合図です。
2ハゼの始まり
音が聞こえてすぐ煎り止めた状態が「シティロースト」、やや浅めの中深煎りです。苦みと酸味のバランスが最も取れた状態です。
※今回は分かりやすいように少し遅めに煎りました。
2ハゼ終了
2ハゼが終わってすぐ煎り止めると「フルシティロースト」、深煎り寄りの中深煎りに仕上がります。
ポイントはピーク手前で煎り止める事です。後述しますが、ピークを確認して煎り止めても焙煎は進みますので、この状態には仕上がりません。
【深煎り】2ハゼ終了
ここから先は煙がものすごく出ます。ご家庭でやるにはおススメしません。
【仕上げ1】冷却
狙った焙煎度で煎り止めたら、準備しておいたザルに豆を広げ一気に冷やしてください。
冷却中も豆内部の熱で焙煎が進んでいますので手早く冷やします。
※やけどに注意
豆も飛び散る心配も無し!
【仕上げ2】ガス抜き
十分冷めたら密閉されたキャニスターに移し替えます。
日の当たらない暗い場所で数日置くと香りと味が安定し、美味しく飲めるようになります。
ガス抜きの必要性
焙煎したての豆は、内部に炭酸ガスが大量に留まっています。
新鮮なコーヒー豆という目安なので悪いことではありません。
しかし飲んでもさほど美味しくありません。理由は以下の通りです。
内部にガスが残っている状態でお湯を注ぐと、大量の泡が出てきてしまい豆とお湯がうまく接触できず抽出ができない。
焙煎した豆をすり潰し、お湯を注ぎ、苦みと酸味、香り成分を抽出して初めてコーヒーは完成します。
そこでガスが大量に発生すると抽出を妨げてしまいます。
すぐに飲みたい気持ちを押さえ、少し待つことによりガスが抜けます。すると安定した抽出が可能になり美味しく飲む事ができます。
逆に放置しすぎると豆は酸化して不味くなります。
まとめ
手綱焙煎のメリットは、豆の状態を直接確認できる。煙の抜けが良いので余計な匂いがつかない。火力の調整が容易である事です。
デメリットは、腕がすごく疲れる。気温などにより再現性が難しい事です。
しかし手軽に始めることができるので、最初は手綱で練習し、慣れてきたら上位のロースターに切り替えたほうが良いと思います。