インドコーヒー 特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を解説
世界第2位の人口と、日本の約9倍の国土を有する多民族国家です。
地域によってかなり気候が異なり「暑季」「雨季」「乾季」があり、これらの気候もコーヒーの味に一役買っているようです。また、アラビカ種だけでなく高品質なロブスタ種も多く生産しています。
日本ではカレーやスパイスのイメージが強い国ですが、実は優秀なインドコーヒーの特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を詳しく解説していきます。
基本情報 | |
---|---|
国名 | インド共和国(アジア) Republic of India |
人口 | 13億8000万4385人(※1) |
面積 | 328.7万平方キロメートル |
首都 | ニューデリー |
コーヒー生産量 | 570万袋(※2) |
参考:(※1 United Nations World Population Prospects 2019より)
(※2 全日本コーヒー協会 ICO統計より)
インドコーヒーの特徴 おすすめ焙煎度は?
淹れたときに感じる味や香り、生豆の特徴やおすすめの焙煎度などを解説します。
特徴
酸味、苦みも比較的少なく飲みやすいコーヒーです。
モンスーン処理(詳細は後述)されたモンスーン・マラバールという銘柄は別名「黄金コーヒー」と呼ばれ、独特の香りとコクはクセになります。
おすすめ焙煎度
適度な酸味と、ほどよい甘さを楽しみたい 中煎り~中深煎り
飽きのこないコクを楽しみたい 中煎り~深煎り
酸味と苦みのバランスがいいのでブレンドに使うのもおススメです。オールマイティにこなす優秀なコーヒー豆です。
焙煎について 世界には数多くのコーヒー豆が存在し、品種や生産国による精製方法、酸味や苦み、豆の大きさ、硬さなど様々な特徴があります。そして、そのコーヒー豆のポテンシャルを引き出すためには、適切な焙煎度(煎り止め)が必要になってきます。 […]
少し変わった物語からコーヒーが始まった 現在に至るまでの歴史を解説
長い歴史と様々な神話や逸話もあるインドですが、コーヒーの始まり方も少し変わった物語があります。
インドコーヒーの歴史
1670年に「ババ・ブーダン」というイスラム教徒がサウジアラビアのメッカに行きました。帰る途中にイエメンに寄り道し、コーヒー豆を7粒持ち帰ったと伝わっています。
当時、イエメンではコーヒー豆の持ち出しが禁止されていました。しかしコーヒーの虜になっていたブーダンはコーヒー豆を隠してインドに帰ったそうです。
ちなみに「7」という数字はイスラム教にとって神聖な数だそうです。
持ち帰った豆は、カルナータカ州チクマガルルの丘に植えられました。そこで繁殖し、現在も重要なコーヒー産地として栄えています。
丘にはブーダンの名前が付けられババ・ビューダン・ジリ(Baba Budangiri)と呼ばれ有名な観光地となっています。
繁栄と衰退
19世紀半ば、英国植民地の下でインド南部のコーヒー農園は繁栄し始めました。しかし長続きはせず衰退していきました。
1870年代にはサビ病が増加し、コーヒの木が打撃を受けました。病気に対抗すべく研究を重ね、サビ病に耐性を持つ品種が幾つか開発されました。
1942年、政府が「インド・コーヒー委員会」を設立しコーヒーの統制を始めました。
次第に生産量は伸び1990年代にはコーヒーの販売方法と場所の規制も緩和され、国内の市場も急速に成長し30%も増加しました。
インドとロブスタ種
標高があまり高くないインドはロブスタ種の生産が適しており、ロブスタ種が多く生産されています。
インドのロブスタ種生産は、手入れも行き届いているので雑味の少ない最高品質のロブスタ種が栽培されています。しかし、ロブスタ種の特有のにおいは残るためエスプレッソにブレンドするのを好む焙煎業者に人気があります。
モンスーン処理
インドで有名なコーヒーにモンスーン・マラバールという銘柄があります。
「モンスーン処理」と呼ばれる独自の工程で作られたコーヒーは、通常とは違った味が楽しめる特徴があります。これは英国植民地時代、ヨーロッパへコーヒーを輸出する際に偶然が重なり出来たものでした。
偶然その1 木箱に入れて輸送していたため、モンスーンの季節は降雨にさらされてしまいました。
偶然その2 結果、生豆が大量の湿気を吸収して味に影響がでました。
現在の輸出方法は改善していますが、モンスーン処理されたコーヒーの需要が多かったため西海岸沿いで同じ過程が再現されるようになりました。
モンスーン処理は、ナチュラルで精製されたコーヒーにだけ施されます。
処理された生豆はとても薄い色になりもろくなります。これが「黄金コーヒー」とも呼ばれ、独特の香りとまったりとした味わいはとてもクセになります。
酸味はやや無くなりますが「ピリッ」としたフレーバーが表れます。
人によっては好き嫌いが分かれ、コーヒー業界でも評価が分かれています。
モンスーン処理された豆はもろいので、均一に焙煎するのが難しくなります。
インド豆の格付け(グレード)
等級 | 名称 | スクリーンサイズ |
---|---|---|
1 | APAA (アラビカ・プランテーション・AA) | 7.14mm~ |
2 | APA (アラビカ・プランテーションA) | 6.65mm~ |
3 | APB (アラビカ・プランテーションB) | 6.00mm~ |
4 | APC (アラビカ・プランテーションC) | 5.50mm~ |
粒の大きさで等級が分かれます。
またアラビカ種かロブスタ種、精製方法によって違いもあります。
等級(アラビカ種) | 精製方法 |
---|---|
プランテーション | アラビカ種のウォッシュト(水洗式) |
アラビカチェリー | アラビカ種のナチュラル(乾燥式) |
等級(ロブスタ種) | 精製方法 |
---|---|
パーチメント | ロブスタ種のウォッシュト(水洗式) |
ロブスタチェリー | ロブスタ種のナチュラル(乾燥式) |
トレーサビリティ
インドには約25万の生産業者がいますが、98%は小規模農家なので個別の履歴を遡ることは難しくなります。しかし精製方法や特定の地域なら可能です。
気になる生産地域をチェック!
国土が広いインドは、地域によって気候が異なります。基本的に暑季は4月~5月、雨季は6月~10月、乾季は11月~3月に分けられます。
主な生産情報と品種
主に4つの州で生産されています。そこから更に細かく産地が分かれています。
タミル・ナードゥ州
インド最南部に位置し、ドラヴィダ様式のヒンドゥー教寺院で有名です。主な生産地域は「パラニ」「ニルギリ」「シェバロイ」です。
シェバロイ
標高:900~1500m
収穫期:10月~2月 品種:S795、コーベリー、セレクション9
主にアラビカ種を生産している地域です。小規模農家が多い地域ですが、大規模農園がコーヒー栽培地の75%を占有しており土地の分配が歪んでいる地域です。
インドのコーヒー生産地の中でも、最も標高の高い地域で酸味と苦みのバランスが良いコーヒーが栽培されています。
カルナータカ州
インドコーヒーの大半を生産している州です。インドコーヒー発祥の地「ババ・ビューダン・ジリ」があります。
チクマガルル
標高:700~1200m
収穫期:10月~2月 品種:S795、セレクション5B、セレクション9、コーベリー、ロブスタ
ババ・ビューダン・ジリを含む広い地域で、美しいコーヒー農園が数多く存在します。栽培に適した気候で、豊かなフレーバーと甘味を感じるコーヒーを味わえます。
マンジャラバード
標高:900~1100m
収穫期:10月~2月 品種:S795、セレクション6、セレクション9、コーベリー
アラビカ種を主に生産している地域ですが、いくつかの農園が作るロブスタ種は「インド・コーヒー委員会」の品評会で高い評価を受けています。
ケーララ州
インド南西部に位置し、インドコーヒーの約3分の1を生産しています。モンスーン処理されたモンスーン・マラバールの歴史上のルーツはここから始まっています。ほぼすべてがロブスタ種です。
アーンドラ・プラデーシュ州
標高:900~1100m
収穫期:10月~2月 品種:S795、セレクション4、セレクション5、コーベリー
新たにコーヒー栽培が開始された地域です。すべてアラビカ種ですが、国内総生産量の2%程しかありません。
同じ地域のコーヒー生産国【アジア】
コーヒーは国によって様々な特徴があります。近隣の国をまとめたので興味があれば読んでみて下さい。
インドネシアコーヒー 特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を解説 独特な味わいがあるインドネシアコーヒーは世界中の人々から愛されています。 伝統的な精製技術「スマトラ式」を持つインドネシアコーヒーの特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を詳しく解[…]
中国コーヒー 特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を解説 中国マーケットの中でもコーヒー産業は歴史が浅く、まだ課題も残りますが目が離せない産業の一つでもあります。 そんな中国コーヒーの特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を詳しく解説していきます[…]
イエメンコーヒー 特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を解説 首都サヌアは世界遺産にも登録されるほど美しい造りをしている国です。 その上、独自の生態系を持つソコトラ島などイエメンは魅力あふれる国なのです。 フクちゃん 過去[…]
ベトナムコーヒー 特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を解説 観光にも人気があるベトナムですが、実はコーヒー業界でもとても重要な位置を担っています。 南北に長いベトナムは地域によって気候が大きく変わり、食文化も異なります。そんなベトナムコ[…]
フィリピンコーヒー 特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を解説 東南アジアに位置する島国で、7000を超える島々を保有しています。 観光をはじめとするリゾート地が数多く存在し、近年目覚ましい経済成長を遂げています。そんなフィリピンコーヒー[…]
まとめ
インドコーヒーの解説は以上です。参考になったでしょうか?
世界には様々なコーヒーがあり、その産地独特の豆が多数あります。気になったら試してみて下さい。下記に生豆や味の特徴・おすすめ焙煎度・その他情報をまとめました。
酸味も苦みも比較的少なく飲みやすいコーヒーです。
「黄金コーヒー」で有名なモンスーン処理されたコーヒー、「モンスーン・マラバール」は独特の香りとコクがクセになる味わいです。
適度な酸味と、ほどよい甘さを楽しみたい 中煎り~中深煎り
飽きのこないコクを楽しみたい 中煎り~深煎り
APAA APA APB APC
アラビカ種かロブスタ種、精製方法によって違いもあります。
国内生産業者の98%は小規模農家なので個別の履歴を遡ることは難しくなります。しかし精製方法や特定の地域なら可能です。
シェバロイ 標高の高い地域で、酸味と苦みのバランスが良いコーヒーが栽培されています。
チクマガルル 栽培に適した気候で、豊かなフレーバーと甘味を感じるコーヒーを味わえます。
マンジャラバード いくつかの農園が作るロブスタ種は品評会で高い評価を受けています。
ケーララ州 モンスーン処理で有名な「モンスーン・マラバール」のルーツはここから始まっています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。