イエメンコーヒー 特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を解説
首都サヌアは世界遺産にも登録されるほど美しい造りをしている国です。
その上、独自の生態系を持つソコトラ島などイエメンは魅力あふれる国なのです。
しかし今は内戦が起こり、外務省から退避勧告が出るほど危険な国になっています。
水不足と食料不足、難民も多く人道支援を待ち続けている人が多数存在している、そんな厳しい状況のイエメンコーヒーの特徴とおすすめ焙煎度、生産地域を詳しく解説していきます。
基本情報 | |
---|---|
国名 | イエメン共和国(アジア) Republic of Yemen |
人口 | 2982万5968人(※1) |
面積 | 55.5万平方キロメートル |
首都 | サヌア |
コーヒー生産量 | 10万袋(※2) |
参考:(※1 United Nations World Population Prospects 2019より)
(※2 全日本コーヒー協会 ICO統計より)
イエメンコーヒーの特徴 おすすめ焙煎度は?
淹れたときに感じる味や香り、生豆の特徴やおすすめの焙煎度などを解説します。
特徴
「モカフレーバー」と呼ばれる、赤ワインのような香りが特徴です。
全体的に粒は小さめで丸い豆です。
よく乾燥しているので、豆質がとても柔らかくなっています。
おすすめ焙煎度
ワイン系の上品な香りを楽しみたい 浅煎り~中煎り
野性味を感じながら、甘酸っぱい香りを楽しみたい 中深煎り
最大の特徴である香りを楽しむには、浅めに煎ったほうがイエメンコーヒーらしさを楽しむことができます。
焙煎について 世界には数多くのコーヒー豆が存在し、品種や生産国による精製方法、酸味や苦み、豆の大きさ、硬さなど様々な特徴があります。そして、そのコーヒー豆のポテンシャルを引き出すためには、適切な焙煎度(煎り止め)が必要になってきます。 […]
現在に至るまでの歴史を解説
エチオピアと並び、イエメンは古くからコーヒー栽培を行ってきました。しかしコーヒーの歴史に関する資料はあまり残されていません。
イエメンコーヒーの歴史
初めてイエメンにコーヒーを伝えたのはエチオピアと言われています。
エチオピアからメッカへ向かう巡礼者たちによって持ち込まれ、15~16世紀に根付いたと伝えられています。
水不足と土壌の栄養不足問題
イエメンのコーヒー生産は深刻な問題を抱えています。
国内で農地に適した土地はたった3%にすぎません。しかも水不足にも悩まされている上に、肥料を撒く習慣もあまり無いので土壌の栄養不足が課題となっています。
収穫方法と精製方法
コーヒーチェリーの収穫は主に手作業で行われています。それにより、成熟していない実も全て摘み取ってしまいます。
収穫後の精製方法は水不足のため天日干し(ナチュラル)されます。それにより「モカフレーバー」と呼ばれる、赤ワインのような芳醇な香りが生まれます。
しかし、乾燥ムラやカビなどの問題も多く起こってしまい、欠点豆も多くできてしまいます。
内戦によるコーヒー産業への影響
イエメンのコーヒーは海外からの人気がとても高く需要があり、高値で取引されていました。
しかし、2015年の内戦によりコーヒーの輸出量は半分近くにまで落ち込みました。
現在は徐々に持ち直そうとしている状況です。
かつてはエチオピアとイエメンで作られたコーヒー豆を出荷する港として栄えていました。しかし現在モカ港は使われていません。
1615年に初めてコーヒーがヨーロッパに向けて出荷されました。当時のコーヒー生産はエチオピアとイエメンが世界の中心だったため、コーヒーを船積みするモカ港の「モカ」はコーヒーの代名詞として知られていました。
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コーヒー生産の副産物「キシル」
イエメンで飲まれている歴史あるコーヒーの代用品です。
コーヒーチェリーを精製する過程で取り除いた果肉~内果皮(パーチメント)を乾燥させたものです。
ハーブティーのようにお湯で抽出して飲みます。独特な甘みと酸味が特徴的です。
中米では「カラカス」と呼ばれる、果肉だけを乾燥して使った飲み物も存在します。
イエメン豆の格付け(グレード)
イエメンでは、品質による等級は無く、生産地によって格付けされます。
格付け | 地区名(名称) | 地区内での格付け |
---|---|---|
最上級 | バニーマタル(アールマッカ) | 「マタリ」の中でも豆が大きく品質の良いものを更に選別したもの |
バニーマタル(マタリ) | No.9 | |
No.8 | ||
No.7 | ||
No.6 | ||
サヌア | 平均より上 | |
平均より下 | ||
シャーキ | ― | |
最下級 | ホデイダ | ― |
基本的に「マタリ」のグレードが高く、続いてサヌア、シャーキ、ホデイダと続きます。
格付けは各地域で独自に存在し、バニーマタル地区(マタリ)は最高ランクのNo.9から低ランクのNo.6まであります。
サヌアは品質の平均より上か下かで判断するなど、かなり複雑です。
上記の格付け以外にも、ほかの地区や条件によるグレードもいくつか存在しています。
トレーサビリティ
基本的に「モカ」の名称が多く表示され、詳細はとても分かりずらくなっています。
「マタリ」など地域名が付いている場合は分かりやすくなっています。
気になる生産地域をチェック!
夏は暖かく、冬は涼しい環境です。 気温は年間を通して5℃から29℃に変化します。
主な生産情報と品種
標高も高く、昼夜の寒暖差も大きくコーヒー栽培に適した環境が揃っています。
栽培地区はそれほど多く存在せず、重要な生産地はさらに少ない数しかありません。
サヌア
標高:1500~2200m
収穫期:10月~12月 品種:マタリ、イスマイリ、他在来種
国内最大の生産地域でイエメンの高品質なコーヒーの多くを生産しています。サヌア付近にあるバニーマタル地方で栽培されたコーヒーを「マタリ」と呼びます。
ライマ
標高:平均1850m
収穫期:10月~12月 品種:ライミ、ダワイリ、他在来種
比較的小さな産地ですが、NGOによる水質管理プロジェクトが行われています。近いうちに素晴らしいコーヒー生産地になるかもしれません。
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まとめ
イエメンコーヒーの解説は以上です。参考になったでしょうか?
世界には様々なコーヒーがあり、その産地独特の豆が多数あります。気になったら試してみて下さい。下記に生豆や味の特徴・おすすめ焙煎度・その他情報をまとめました。
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「モカフレーバー」と呼ばれる、赤ワインのような香りが特徴です。
全体的に小粒で丸い豆く、豆質はとても柔らかいです。
ワイン系の上品な香りを楽しみたい 浅煎り~中煎り
野性味を感じつつ甘酸っぱい香りを楽しみたい 中深煎り
アールマッカ マタリ サヌア シャーキ ホデイダ
基本的に「モカ」の表示が多く、詳細は分かりずらくなっています。
サヌア 国内最大の生産地域で高品質なコーヒーを生産しています。有名な「マタリ」もこの付近で栽培されています。
ライマ 比較的小さな産地ですが、水質管理プロジェクトが行われています。今後素晴らしいコーヒー生産地になるかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。